コミック1☆3 配布ペーパー

「あ、ウシオー!」
「あン?」
 アイツは突然やってきて……
「あとは頼んだ。じゃ!」
 アタシに、自分の握っていたものを押し付け……
「は……オイ!? 頼んだって、このガキをか!?」
「ヒツギ。悪いけど、今日はこのヤンキーお姉ちゃんと一緒に帰っておくれ」
「誰がヤンキーだ――って、オォイ!?」
「うおぉぉ! 待ってろよ再放送ー!」
 私欲にまみれた叫びと……
「マ、マジかよ……」
 めんどくせェものを残していった――。

潮(うしお)ありて猛(たけ)からず

「アタシにどうしろってンだよ……」
 右向けば、半べそのガキ。
 左向けば――
「げ、大場!? やっべ!」
 大場の姿を見た次の瞬間、アタシは走り出していた。
 大場はアタシに気付いてなかったかもしれない。けど、捕まったら捕まったでめんどくせェ。
 そう思ったら、昇降口を通り靴を履き替え、校門を出るところまでダッシュで来ちまった。
「はっ……はっ……撒いたか?」
 久しぶりに全力で走った。けど、その甲斐あってか、大場には捕まらずに済んだみたいだ。
「はっ、はっ……」
「いっけね、連れて来ちゃったよ……おい。オマエ、大丈夫か?」
 虎子が無理矢理私に握らせた手を、そのまま握って大場から全力で逃げちまった。ガキにゃ、ちょっとキツかったか……。
「だっ、だいじょ……ぶ……ッ!」
「あー、わかったわかった。喋んなくて良いから。そのまま息整えてな」
 どうすンだよ、この大丈夫じゃなさそうなガキ……ってか、任されたアタシの方が大丈夫じゃねェって。
「あ、あの……ヤンキーお姉ちゃん」
「あン?」
「――ッ!?」
「ちょ、えー! なんで泣くんだよぉ!?」
 アタシか!? アタシのせいで泣いてンのか!? アタシがヤンキーだから、恐くて泣いてンのか!? ってか、恐がって泣いてンのに、何でアタシの袖掴んでンだよ!?
「あー、もう!」
 これだからガキは苦手だってのに……めんどくせェ。
「フン」
 丁度良い位置にある小さな頭を、思い切り撫でる。
 わしゃわしゃ。
「え……あ……」
 わしゃわしゃ。
「や、やめ……!」
 わしゃ。
「やーぁ!」
 さっきまで泣いてたってのに、今は困ったようにはにかんでやがる。これだからガキって奴は……。
ま、袖から手が離れたし、今が帰るチャンスだな。
「……じゃあな」
「? ヤンキーお姉ちゃん?」
「帰るンだよ。あと、ヤンキーじゃねェから」
 これ以上付き合ってられるかっての。あ~、あち~、かったり~……さっさと家帰って――
「ぐえっ⁉ げっ、けほっ……テメェ、何すんだよッ!」
「――ッ!? ご、ごめんなさ……」
「だぁぁぁ! 何でそこで泣くんだよ! って言うか、何で中のタンクなんだよ⁉ 掴むなら普通、外のTシャツの方だろ!?」
「ひっ! ご、ごめ……」
「だから泣くなってンだよ、うっとう……ああ、もう!」
 わしゃわしゃ。再び。
「あ……え、エヘヘ……」
 今度は一発かよ!
「はぁぁぁぁ……しゃあねェなぁ……」
「え?」
 何だ、そんなにジーッと見て。ヤンキーのアタシが手繋ぐのがそんなに疑問か!? って、だからヤンキーじゃねェっての。
「ほら、行くぞ」
「ヤン……お姉ちゃん?」
「はぁ……潮」
「うしお?」
「名前だよ、アタシの名前」
「ウシオお姉ちゃん?」
「――ッ!?」
 何だオイ、そんな上目遣いでこっち見んなよ!?
「ほ、ほら、さっさとしろよ。帰るんだろ!」
「うん!」
 あ~、大場と良いコイツと良い……なんでアタシの周りはこんなヤツばっか……。
「ウシオお姉ちゃん」
「あ~?」
「お姉ちゃんの家は……どこにあるの?」
「アタシん家か? バス乗って電車乗って――」
 あ~、なんで律儀に答えちゃってンだろうな、アタシ。それにしたって、アタシが「お姉ちゃん」ってガラか?
「……なあ。その『お姉ちゃん』っての――」
「あ、ウシオお姉ちゃん! ねこさん!」
「だから『お姉ちゃんは』……って、行っちゃったよ」
 折角一緒に帰ってやるって言ってンのに……これだからガキは手ちっせェし、甘ったるい匂いしてるし――
「あの、ウシオさん?」
「うわぁ!? あ、歩巳!?」
「どうしたんですか? 手なんかじっと見て」
「なッ!? ち、違う! アタシは別に、アイツの手が離れてちょっと寂しいとかそういうんじゃ……!」
 なんでここであのガキが出てくンだよ!? 意味わかんねェぞ、アタシ!
「え、アイツって? ……あ、ヒツギちゃん。あは、珍しい! ヒツギちゃんと一緒だったんですねー」
「あああれは、と、虎子がだな!」
 だから、なんでそんなに動揺してんだよ!?
「おーい、ヒツギちゃーん!」
「って、えー!? アタシ、シカト!? あぁぁぁ、もう! 全部アイツんのせいだぁぁぁッ!」

-END-
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