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節分だったので(約3時間前まで)

「畜生。嵌められた……霊夢のヤツ、覚えてろよ!」
 人の気配がまるで無い畦道を、一人肩を怒らせながら歩く萃香。その風体は、満身創痍と言うのが適当だろうか。
「ああ、もう! んっとに腹立つ!」
 萃香は八つ当たりに、道の端に落ちていた小石を蹴飛ばした。しかし、小石は萃香が思う程気持ち良くは飛ばず、直ぐ先の水路に落ちただけだった。
「うぅぅぅぅ……うがぁぁぁぁぁ! 小石風情が好い気になりやがって!」
 萃香が叫ぶとほぼ同時に風が止み、辺りから獣や虫の気配すらも無くなった。それに代わり、萃香を取り巻くように小さな旋風が起こった。怒りによって顕わになった萃香の闘気のせいだろう。
 次々巻き上げられる枯葉や雑草は闘気に触れ、一瞬のうちに灰へと変わっっていく。徐々に強く、濃くなる闘気に、砂利すらも舞い上がり始めた。舞い上がった砂利が萃香の眼前で破裂すると、それまで萃香に支配されていた空気は、何事も無かったかの様に普段のそれへと戻っていった。
「もうダメだ……小石にまで馬鹿にされちゃ、酒呑童子の名折れだよ。このまま私は馬鹿にされ、蔑まれながら生きて行くんだ」
 萃香はそう零すと、肩を落としながら畦道を再び神社に向けて歩きだした。

「あ、やっと帰って来た。おーい、萃香……ぷっ」
「ちょっと霊夢、お酒――って、萃香? あらあら。これはまた随分と……派手にやられたわねぇ」
 重い気分と身体を引き摺って、神社に辿り着いた萃香を待っていたもの。それは、笑いを堪える霊夢と、酒の匂いを纏う紫だった。
「霊夢。あんた、よくも謀ってくれたわね」
「それより……ぷっくく……あんた、頭に鰯が乗ってるわよ」
「ああこれ? そこで変なヤツに投げ付けられたんだよ。億劫だからそのままにしてただけ」
 萃香は、頭の上に乗っていた鰯を掴むと、無造作に放り投げた。投げられた一尾の鰯は地面に落ちること無く、紫の作り出した空間の裂け目に吸い込まれていった。
「お土産~、と」
「それにしたって、一尾なんて……あっははははは!」
 とうとう堪え切れなくなった霊夢は、腹を抱えて笑い始めた。からからと笑う霊夢の横で、紫は口許を押さえて笑っていた。
「そんなに……そんなに笑わなくたって良いじゃない!」
「あらあら。泣くことないじゃない」
「泣いてない! 泣いてなんかないよ!」
 そう否定するも、瞳を潤ませながらでは、まるで説得力が無かった。
「よしよし。悔しかったのねー」
「子供扱いすんな! と言うか泣いてない!」
「はいはい。萃香は泣いてないわねー」
 顔を綻ばせながら、萃香の後ろから頭を抱えて撫でる紫。その頬は薄紅に色づいている。一方萃香は、小さく唸りながら、目尻から涙が零れるのを堪えていた。
「はー、お腹痛い……で。あんたは私の忠告を無視して出て行って、案の定酷い目に遭った、と」
 一頻り笑って落ち着いたのか、霊夢は目尻を拭いながらそう言った。
「あんなの! 私に行って来いって、そう言ったのも同然じゃないか!」
「霊夢?」
「今日は何処に行ったって痛い目に遭うだけだから、大人しくうちの手伝いでもしてなさいって。確か、そんな感じ」
「なるほどねぇ」
 鬼の性質だけとは言えない、萃香だからこその性質。付き合いの長さから、それが解っているだろう紫は、一人得心した。
「つまり、霊夢の忠告を挑発と勘違いして飛び出していった結果、炒り豆やら鰯の頭やらを投げつけられて、前進火傷の満身創痍と。ついでに、鰯の生臭さで精神的にも疲弊していると」
「うぅぅぅ……臭いって言うなぁ! なんだよ、皆して臭い、臭いって。好きで生臭くなったわけじゃないってのに」
「よしよし。泣かない、拗ねない」
「拗ねちゃいるけど、泣いてないっての! いい加減その手を離せ、紫!」
 萃香は、紫の手を振りほどくと、その場に座りこんで瓢箪の酒を呷った。神社に着いた頃よりは幾分元気になった萃香に、霊夢と紫は顔を見合わせると頷き合った。
「泣いてないなら、別に大丈夫よねぇ?」
「そうねぇ。折角手近に的があるんですもの、使わない手はないわよねぇ?」
 先ほど鰯を飲みこんだものとは違う裂け目に手を入れた二人。そして、引き抜いかれた二人の手に握られていたのは――。
「ちょ、ちょっと待って!? まさか、それ……私に!? 見てよ、満身創痍!」
 頬を引き攣らながら慈悲を求めるも、萃香は二人の手に握られているものから目を離せない。
「と言われても、今日は2月の3日。節分ですもの。ねぇ、霊夢?」
「そう言うこと。折角年に一回、唯一他人の役に立てる日なんだから。ま、諦めて私達の的になることね」
「いぃやぁだぁぁぁぁぁ!」

‐完‐
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テーマ : 同人小説 - ジャンル : 小説・文学

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